お引き渡しの日を迎えて
勝手口のサッシ窓の交換とスロープに手すりを取り付ける関連工事も終わり、すべての作業を予定通り無事完了させることができました。
最後に屋根の葺き替えと塗装の塗り替えに使用した足場を解体して掃除や後片付けを終えると、いよいよ施主様へのお引き渡しとなります。
約50日の工事期間中に台風による大雨に2度も見舞われました。
天気予報をにらみながらの作業となりましたが、スケジュール調整によって何とか雨の影響を最小限に抑えることができました。
施主様は工事が終わったご自宅を眺めながら「自分がイメージして通りに仕上がった」と大変満足されていました。
正面玄関の腰壁も塗り替え、寄せ棟の純和風住宅から洋風の雰囲気を持つ明るい住宅へと生まれ変わりました。
スロープと手すり
勝手口のサッシ窓の交換に併せてスロープを造ります。
施主様のご自宅の駐車場は、玄関より勝手口の方に近い位置にあります。車から降りて遠回りするより、出入りに勝手口を利用する方が負担が少なくて済みます。
工事のポイントは、施主様が支障なく歩けるようにするため勾配を出来るだけゆるくすることです。
勾配が決まると型枠を作ってコンクリートを流し込み、左官屋さんがコテでていねいに押さえて仕上げます。
コンクリートが充分固まったことを確認してから型枠を外すとスロープが出来上がりました。
スロープの両端に均等に孔が空いていますが、ここに手すりの支柱を取り付けることになります。
手すりを左右に取り付けてスロープ工事がすべて修了しました。これで施主様もご自宅への出入りが楽にそして安全になりました。
勝手口サッシの取り替え
塗装の塗り替えはすべての作業が終わりました。今回は屋根瓦の葺き替えと塗装が主な工事でしたが、関連してあと二つの工事が残っています。
その一つが、勝手口のサッシの取り替えです。
以前のサッシは外枠の強度が充分でないため、開け閉めが窮屈で使い勝手が悪くなっていました。
大工さんが外壁を一部解体して新しいサッシの枠を取り付け、解体してむき出しになった下地には雨仕舞いのために防水シートを貼ります。
サッシを取り付ける準備が出来たら、サッシ屋さんが窓本体を取り付ける作業に入ります。
新しいサッシ窓は上げ下げ窓と呼ばれているのもので、文字通り二つに分割された窓が上下に動く可動式となっています。
上下が開放状態になって風が通ることから別名採風窓とも呼ばれています。
ガラスはペアガラスですから断熱効果が高く、結露が起きにくい仕様となっています。
サッシの外枠と壁の取り合い部分に防水対策のためにコーキン剤を充填すれば作業は終了します。
仕上げはていねいに
塗り替えは一回目が終わって、二回目の仕上げの段階に入りました。
塗り替える箇所は外壁のほかに、軒天井、樋、破風、雨戸や戸袋がありますから、
二人の職人さんが持ち場を手分けして手塗りでていねいに仕上げていきます。
塗料が回りに付着しないように養生シートで保護します。
さらにマスキングテープを貼ってきれいに仕上げるための準備を整えてから作業に入ります。
雨戸は最初に下塗りをした後、二回目の塗りで色を合わせます。刷毛を使い、馴れた手付きで塗りを重ねていきます。
破風板は雨や風が直接当たって傷みやすいため、塗りを重ねて塗膜を厚くします。
どんな作業にもちょっとした工夫や大事なポイントがあります。それをきっちりと押さえていけば、施主様にとって満足度の高い仕上がりにつながります。
塗料の種類
塗料と一口に言っても、非常に数多くの種類があります。
このうち外壁に使用されることが多い塗料は大きく分類すると次の4種類となります。
これは塗料の主成分である樹脂の違いによるもので、あくまでもおおまかな数字ですが耐用年数にも違いがあります。
1)アクリル系 6年から7年
一番安価ですが、塗膜が硬くひび割れが生じやすいのが欠点
2)ウレタン系 8年から10年
アクリル系より塗膜が柔らかく、戸建て住宅の外壁塗料として最も一般的
3)シリコン系 12年から15年
ウレタン系より汚れにくい
4)フッ素系 15年から20年
外壁より屋根に使用されることが多く、価格的には一番高い
下にいくほど価格も高くなりますので、施主様のご予算とご要望を踏まえたうえで使う塗料を決めることになります。
今回は、日本ペイントのウレタン系塗料を使っていますが、写真は、一回目の塗装が終わったところです。
塗装の塗り替え
ケイカル板を貼って出来上がった新しい軒天井と破風のすき間にコーキング剤を充填して雨水や湿気の侵入を防ぎます。
これで塗装の塗り替えに必要な事前の作業は終わりました。
次に、高圧洗浄機を使って建物全体に水を吹き付け、汚れやコケ、カビなどをていねいに落としていきます。
汚れなどが付着したまま塗料を塗っても、やがてその部分が浮いて塗膜がはがれてきます。この洗浄の善し悪しによって、塗装工事そのものの品質や寿命に大きく影響しますので大変重要な作業となります。
洗浄作業が終了するといよいよ塗り替えに入ります。外壁塗装の工程は最初に下塗りをして乾かした後、さらに仕上げの塗りを行う2回塗りです。
今回の外壁材はIGサイディングと呼ばれているもので継ぎ目の目地の間隔が大きいのが特徴ですから、刷毛を使って手塗りで作業を続けます。
サッシ窓やエコキュート給湯器などに塗料が付かないようにビニールシートで厳重に養生して作業を進めていきます。
ケイカル板
屋根瓦の葺き替えが終了しましたので、これで雨の心配は無くなりましたが、改修作業はまだまだ続きます。
年数の経過で古くなってしまったのは軒天井も同じで、現状の化粧合板は表面の色も落ちてきています。
そのままの状態ではどんどん悪くなっていきますから、下地を作ってケイカル板を貼り、塗装で仕上げることにしました。
ケイカル板は、正式にはケイ酸カルシウム板と呼ばれています。
珪藻土や消石灰、無機質繊維に水を混ぜて作ったもので、比重が軽くて防火性能が高く、建築材料として幅広く利用されています。
厚さが薄いものならカッターで切れることから作業もしやすく、大工さんが次から次へと貼り付けていきます。
施主様の家は軒天井の面積が広いのが特徴ですが、下地の造作とケイカル板の張り付けを二日間で終えることができました。
何とか間に合いました
下屋根の棟瓦もすべて取り付け、葺き替え工事が終わりました。
完成まで約三週間の日数を要しましたが、この間二度の台風接近によって大雨が降りました。
屋根工事は、いつも天気予報をにらみながら作業スケジュールを組んでいきます。
特に台風が近づいたときは、風と雨の影響を最小限にとどめるため作業内容の調整が必要になります。
最初の台風接近時には大雨が予想された前日までに、大屋根の部分の工事を終わらせていました。
二度目も職人さんが食事や休憩の時間もそこそこに作業のスピードを上げ、何とか間に合わせることが出来ました。
工事期間中、台風によって二度も大雨に見舞われるのもめずらしいことですが、職人さんの頑張りで無事乗り切ることができました。
ベテランの技
今回の瓦の葺き替えを担当している職人さんは、この道35年の大ベテランです。
古い瓦を取り除くときだけは応援が入りますが、新しい瓦の葺き替え作業は、この職人さんがすべて一人で行っています。
今回使用している瓦は波形です。平板瓦に比べて同じ面積の屋根を葺く場合でも二、三日は日数が掛かりますが、馴れた手付きで次から次へと作業をこなしていきます。
棟が重なっているところや角度が違うところは、一枚の棟瓦をカットして取り付けていきます。
この一枚の瓦を手際よく短時間でカットするときにベテランの技が十二分に発揮されます。
スケールを使って長さを測りますが、丸い棟瓦にあてることはできません。
そこで、自分の長年の経験と勘を頼りに電動丸のこを使ってカットしますが、ほとんど一回でピシャリと決めています。
優れた技能を持つ職人さんが高齢化して、次の若い世代がなかなか育っていないのが建築業界の共通の悩みとなっています。
すずめが少なくなった理由!?
ここ数日間は天気にも恵まれ、下屋根の瓦を葺く前の作業が順調に進んでいます。
緑色の木片は瓦を釘で留めるときの下地材ですが、職人さんが屋根のコーナーに波のような形をした黒っぽいものを取り付けています。
これは、すずめ返しと呼ばれているもので、文字通りすずめが屋根瓦のすき間から中に入って巣を作るのを防いでくれます。
近くで見るとサメの歯のような形をしています。
今回施主様が選んだ瓦は波状にウェーヴしていますので、瓦の先端にすき間が出来てしまいます。このすき間を埋める役割をするのがすずめ返しです。
最近、すずめが少なくなって市街地であまり見かけなくなったと言われています。
地球温暖化の問題とからめて自然環境や生態系の変化を指摘する学者もいるようですが、すずめが巣を作りにくくなっていることもその原因のひとつかもしれません。