ちょっと残念な実りの秋
施主様の敷地には、庭木や花木のほかに果樹が植えられています。
毎年食べきれないほどたくさんの実を付け、近所や知り合いの方にお裾分けしているようです。
とても美味しいと評判が良いそうで、まわりの方も出来具合を楽しみにされているとのことです。
今年も温州みかんが大きな実を付けましたが、いつもの年と比べると数が極端に少ないようです。
全体を見渡してもごらんの通り、ちらほらという程度です。
昨年はたわわに付けたみかんの重みで、下の枝が地面に付かんばかりになっていたのがウソのようだと仰っていました。
ところが、実の数が少ないのはみかんだけでなく、南側に植えている柿の木も同じです。
こちらはもっと少なく、全部で数個という状態です。
今年は裏年に当たるのかもしれませんが、いままでにない少なさにまわりの方が残念がっています。
今年はちょっと寂しい秋になりそうです。
大屋根の次は下屋根
大屋根の吹き替えが一区切り付いたところで、次は下屋根の作業に移ります。
同じように旧い瓦を剥がしていきますが、この作業を一人で行うのはさすがに無理がありますから、応援を二人頼んで3人掛かりとなります。
傾斜のある屋根の上で瓦を一枚ずつ剥がして行く作業は大変きつい仕事です。
取り外した瓦は土のう袋に入れていきますが、すぐに袋が一杯になります。
一杯になった袋を瓦の上げ下ろしに使う機械で地上まで降ろす作業を瓦がなくなるまで続けます。
すべての瓦の取り外しが終わると、雨に備えてすぐにルーフィングを貼り付けていきます。
作業は大屋根の場合とまったく同じように進めていきます。瓦を留める桟木を均等に割り付けて固定します。
準備作業が一つづつ進んでいきます。
大屋根の葺き替えが終わりました
大屋根のうち東西方向と南方向の吹き替えは、棟の部分を除いて終わっています。
吹き替えの作業は基本的に職人さん一人でずっと行っていますが、屋根の面積が広いだけに壮観の眺めです。
建物北側の谷の部分は、作業の進め方がほかと異なりますから最後になります。
ガルバリウム鋼板製の谷を流れる雨水が、谷を越えて左右の屋根側に侵入しないように仕切りを付けています。
また、万一雨水が仕切りを越えた場合に備えて、上段の雨水が屋根側に広がらないように仕切りを分割して防ぐ工夫がされています。
谷部分が完成するとこういう形になります。見えるの金属製の谷だけですが、これで雨水の浸入を完璧に防ぐことが出来ます。
最上部分とそれぞれの方向の棟に棟瓦を載せると大屋根の吹き替え作業は終わりです。
大屋根部分にひとまず区切りがつきましたので、明日から下屋根の作業に移ります。
瓦の葺き替え
瓦の葺き替えの前に必要な作業がまだ二つ残っています。
一つは、屋根の一番下の軒先に水切りを取り付けます。文字通り雨水が浸入したときに樋へ逃がす役割をします。
もう一つの作業が、大屋根の北東方向にある谷部分のやり替えです。
取り替える前の古い谷は状態が悪く、この箇所が建物内部への雨漏り原因の一つとなっていました。
谷は左右部分を広くして余裕を持たせ、雨水が樋にスムーズに流れるようにしています。
水切り、谷の板金は両方ともガルバリウム鋼板製で耐候性が高く、大変強いのが特徴となっています。
全ての下準備が整ったところで、いよいよ瓦葺き作業が始まりました。
軒先から上方向に一枚ずつ釘で留めていきます。瓦は粘土を焼成して作りますから、かたちがそれぞれ微妙に違っています。
職人さんはその違いをうまく調整しながら葺いていきます。
瓦の産地
今回使用する瓦は、いわゆる淡路瓦と呼ばれている種類の一つです。
瓦は古くから全国各地で生産されていましたが、現在では愛知県西三河地方の三州瓦、島根県岩見地方の石州瓦、そして兵庫県淡路島の淡路瓦が三大産地となっており、国内全体の9割を占めています。
その淡路瓦の中から施主様が選んだのが写真の瓦です。
二つの山形の谷の部分が雨水の流れをスムーズにして、水平方向の流入は二段の水返しにより防ぎます。
台風時の強い風や阪神淡路大震災クラスの大地震にも耐えうる防災・耐震機能を持った瓦です。
今回施主様が選ばれた瓦の色とデザインは、ご自分の出身大学である関西学院大学のキャンパスのイメージです。
青春時代の思い出がいっぱい詰まったキャンパスには特別の思い入れがあるようです。瓦のサンプルを持参したときに、迷わずこの瓦に決定されました。
大屋根の葺き替えに必要な瓦を引き上げてルーフィングの上に載せています。
下準備は入念に
ルーフィングを二重に敷き込んだあとも瓦を載せる前の下準備の作業が続きます。
緑色の木片は瓦を釘で留める時の下地となります。色が付いているのは防水と白アリ対策を兼ねて薬剤処理されているためです。
次に、大屋根の四つの棟方向に棟瓦を載せるための下地を作ります。
黒くて長い棒状のものはエコランバと呼ばれるもので、棟瓦の骨の部分になります。
エコランバをルーフィングに留めたステンレス製の受けに固定していきます。
エコランバは樹脂で作られています。屋根工事に使用する部材は、当然のこととは言え、とにかく雨水に強く、腐れにくいのが特徴です。
ベテランの職人さんが、馴れた手付きで次から次へと作業を進めています。
どんな工事も一緒ですが、完成後は目に見えなくなる部分をいかにしっかり作るかが、工事の品質を左右する一番大事なポイントになります。
二つのルーフィング
ルーフィングとは、フェルトや厚い板紙にアスファルトをしみ込ませて作った防水シートのこと。
雨水が屋内に侵入するのを防ぐために、木造住宅の屋根材として広く使われています。
大屋根の瓦をすべて取り除いた後の野地板に、まずアスファルトルーフィングを敷き付けます。
次に、さらにその上にゴムアスファルトルーフィングと呼ばれる別の種類のルーフィングを敷きます。
ゴムアスファルトルーフィングは、アスファルトに異なる成分を使ったもので、接着性が高く、伸びや曲げに強いのが特徴です。
むらさき色がゴムアスファルト、もう見えませんがその下にみどり色のアスファルトのルーフィングを敷き込んでいます。
性質の違う二つの種類のルーフィングを敷くことで、雨水の浸入をシャットアウトすることができます。
レッカー車の出動
屋根瓦の葺き替え工事に入りましたが、屋根工事はいつも天気予報とにらめっこしながらの作業となります。
雨の影響をなるべく避けるために、作業は一番上の大屋根とその下の下屋根の二つに分け、大屋根部分から行います。
まずは古い瓦を取り除いていくのですが、ここで活躍するのがレッカー車です。
職人さんが屋根に上がり、レッカー車の先端にぶら下げた袋に古い瓦を次から次へと入れていきます。
袋が一杯になると待機しているトラックに降ろす作業を繰り返します。
レッカー車を使うことで、ほこりや騒音をなるべく少なくして短時間で作業を終わらせることが出来ます。
ただ、回りが住宅に囲まれているところや敷地に余裕がない場合はレッカー車を入れることが出来ないため、職人さんがすべて手作業で行うことになります。
今回は、民家があるのは南側だけで敷地にも余裕がありますから、スムーズに作業が進みました。
建物外回りの改修工事
お客様から2階の天井や壁に雨漏りの跡のようなシミがあるので調べて欲しいとの連絡がありました。
早速、建物の屋根裏に上がって調査したところ、屋根の谷のところに黒いシミやカビを確認しました。
ほかにも何カ所か雨漏りが疑われる箇所がありましたので、写真を撮っておきました。
お客様に撮影した写真を提示しながら状況を詳しく説明したところ、雨漏りの箇所が複数あること、築30年近くになってスレート瓦の状態が良くないことなどから、新しい瓦で屋根を葺き替えることになりました。
合わせて足場があるこの機会に、外壁の塗装の塗り替え、軒天の貼り替えも行うことになりました。
工事は、外部足場の組立から始まります。
3人の職人さんが次から次へと馴れた手つきで部材を組み立て、午後一番から始めて4時間位で作業が終わりました。
これで工事の準備が整いましたので、明日から屋根工事に取り掛かります。
竣工 玄関回り
工事期間中にキズや汚れが付かないようにするため、ずっとダンボールで保護していた玄関引き戸。
すべての工事が終了して、引き渡し前の美装のとき、養生を外してはじめて姿を現しました。
奥さまによると、これから多目的ルームでミーティングや勉強会などの機会が増えるとのこと。
訪れたお客様が、すっかり雰囲気が変わったとはっきり分かるくらい、イメージを変えて欲しいとの強いご要望でした。
以前の開きドアからスライド引き戸にしたのはポーチを広く使えて使い勝手を良くするため。写真では分かりませんが、右側の壁には明かり取り用の窓を設けています。
玄関回りの壁は、引き戸の色をベースに二種類のタイルを使い分けてコントラストを付け、軒天井も同系色のカラーでアクセントとして強調させています。
以前と見違えるほどに生まれ変わった正面玄関に施主様夫妻とも大変満足されていました。
工事に入ってから最初のうちは雨の日が多く、工程の遅れを心配しました。
梅雨が明けると今度は猛暑が続いて工程管理には気を配りましたが、当初の予定通りに無事お引き渡しを終えることが出来ました。